『無料低額宿泊所』(以下、宿泊所)とは、社会福祉法に基づき、生活困窮者の自立支援を目的に、無料または低額で提供されている一時的な住まいである。その多くはNPO法人、つまり民間によって運営されている。しかし、中には本来の目的・理念に反して、入所者の弱みに付け込み、生活保護費などを搾取をする貧困ビジネスも少なからず存在している。
生活保護を受給するには定まった住居が必要である為、まず職員は、路上生活者ら生活困窮者を「ここに入れば生活保護費を受けられる」という甘い言葉で誘い込み、宿泊所に入所させる。次に、職員が入所者に同行し、生活保護の手続きをさせる。
しかし、一部の宿泊所では受給者の口座から、施設使用料(家賃)・食費・運営費・その他光熱費名目で、自動的に送金される手続きが取られている為、1か月13万円ほど支給される生活保護費が受給者本人に渡ることは無く、搾取された末に手元に残るのは、僅か3万円程しか無い。
運営団体が受給者の預金通帳やキャッシュカードを押さえている為である。こうした手続きは、受給者本人しか出来ないはずだが、運営団体は、受給者名義の印鑑を作り、口座を開設、それらを使用している場合がある。また、住環境も劣悪であり、1人にあてがわれるスペースは2帖ほど、ワンルームをベニヤ板で仕切っただけの“部屋”で、プライバシーも無いことが多い。
宿泊所は都道府県に対する届出制で開設できるため、どんな法人格でも開設することができる。つまりは、介護保険サービスのようにNPO法人や株式会社など民間の参入が容易であり、本来の役割である支援サービスの優劣は設置主体により大きく異なると言える。こうした宿泊所のあり方について、行政サイドはガイドラインを整備し、その遵守のために社会福祉法に基づく監査を実施している。
参考ニュース
無料低額宿泊所:大手事業者、保護費2.5億円が使途不明 自治体に説明拒否
◇委託名目支払先、幹部が役員兼務
生活保護受給者から利用料を集めて運営されている大手事業者「FIS」の「無料低額宿泊所」が、施設の家賃や職員の人件費などのほかに「業務委託料」名目の使途不明の支出を多額計上していることが分かった。東京などの4施設の06~07年度分だけで2億5000万円を超えているが、委託先とされる会社の経営実態は明らかにされておらず、役員もFIS幹部が兼務している。
生活保護費が入所者の生活や自立支援と無関係に使われている疑いがあり、一部自治体が社会福祉法に基づく調査を始めたが、FIS側は具体的説明を拒否している。
FISは、東京都や埼玉、千葉、神奈川、愛知県内で土地建物を借り上げ、18宿泊所(総定員約1900人)を運営する任意団体。入所者が毎月受給する約12万円の保護費から約9万円の利用料を集めている。NPO法人などが運営する多くの宿泊所では、利用料の大半が給食の食材費や職員の人件費、施設賃貸料に充てられる。だが、東京都と千葉県でFISが運営する4施設が所管自治体に提出した収支計算書には、これらの経費とは別に、支出全体の3割前後に上る「業務委託料」が計上されていた。
4施設の07年度の委託料総額は計1億5575万円。06年度も3施設の9カ月分だけで9607万円が確認された。神奈川、埼玉県内のFIS宿泊所でも、支出の2~3割を委託料が占めているといい、18宿泊所全体の委託料は年間3億~4億円に上るとみられる。
委託先についてFISは、事務受託や飲食店経営を目的とする有限会社「エリアプロデュース」と結んだとする業務委託契約書を千葉市に提出しているが、エ社の役員はFISの代表や幹部が兼務、所在地も東京都北区にあったFISの事務所と同じだった。
委託先会社の収支は一切報告されておらず、幹部らの報酬額も不明なため、千葉市が社会福祉法に基づく調査に乗り出したが、FISは「運営や事務等の一部を委託している。委託先は契約時の取り決めで開示できない」と具体的な説明を拒否。船橋市の問い合わせには回答を拒んだ。横浜市や埼玉県は「権限がないので調査できない」としている。
取材に対し、FISは「法令及び所轄省庁の指導を順守するよう努める」と文書でコメントした。FISについては、埼玉県や千葉市の傘下宿泊所が入所者の金銭を無断で管理していた問題が指摘されている。【無料低額宿泊所取材班】
毎日新聞 2009年9月22日 東京朝刊
